教えて--みなさんのお知恵拝借
翻訳実務サポート会議室Ver. 1.27.2
メール配信サービスを開始 停止 e-mailアドレス

[記事表示に戻る] [ツリートップの表示に戻る]

◇┳ご教示ください-投稿者:翻訳独学生(1/15-01:47)No.265
 ┗┳Re:ご教示ください-投稿者:翻訳独学生(1/15-02:03)No.266
  ┣━Re:ご教示ください-投稿者:Ogalo(1/16-21:19)No.269
  ┗┳Re:ご教示ください-投稿者:きゃでぃ(1/20-03:27)No.275
   ┗┳Re:ご教示ください-投稿者:翻訳独学生(1/20-07:52)No.276
    ┗┳Re:ご教示ください-投稿者:きゃでぃ(1/22-03:14)No.278
     ┗━Re:ご教示ください-投稿者:翻訳独学生(1/23-06:50)No.279


トップに戻る
ご教示ください翻訳独学生 2651/15-01:47

基本的な疑問なのですが、
ソフトウェアのライセンス契約書の中に、

You may distribute any portion of this software.

という表現が出てきた場合、みなさんはどのように訳出されているのでしょ
うか。

小生が知りたいのは any (any+単数名詞)をどのように処理するかです。
まず、厳密に訳出する必要があるのかどうか。

英文からの訳出したと思われるライセンス契約(書)に関する訳文の中で
anyが存在すると推測される部分においてanyが訳出されていない場合がほと
んどのように思えるのですか...

ちなみに、上記の文を例にとって言えば、

お客様は本ソフトウェアの一部を配布することができます。

というような訳が大半であるように思えます。

あえてanyを訳出するとどうなるのでしょうか。小生の試訳では、

お客様は本ソフトウェアのいかなる(どの)部分でもこれを配布することが
できます。
(この訳では、一度「いかなる部分でも」と副詞的に訳出し、それを「これ
を」で受けてdistributeの目的語としています。)

となってしまうのですが、このような訳し方にはあまりお目にかかりませ
ん。いかがなものでしょうか。

実際には、そして最終的にはanyをあえて訳出せずとも契約上問題が生じな
ければ訳出する必要がないわけですが...そのあたりを含めてみなさんは
any をどのようにされているのでしょうか。
ご教示、またはご意見をいただければ幸いです。よろしくお願いします。

トップに戻る
Re:ご教示ください翻訳独学生 2661/15-02:03
 記事番号265へのコメント

書き忘れましたが、

You may distirbute any portion of this software.

の場合は、

お客様は本ソフトウェアのいかなる部分でも配布することができます。

でよいかもしれませんが、これが否定文になっている場合、つまり

You may not distribute any portion of this software.

の場合はどうしたらよいのでしょうか。

お客様は本ソフトウェアのいかなる部分をも配布することができません。

お客様は本ソフトウェアのいかなる(どの)部分もこれを配布することはできませ
ん。

こんな訳はどんなものでしょうか。

よろしくお願いします。
どちらが




トップに戻る
Re:ご教示くださいOgalo 2691/16-21:19
 記事番号266へのコメント

翻訳独学生さんは No.266「Re:ご教示ください」で書きました。
>書き忘れましたが、
>
>You may distirbute any portion of this software.
>
>の場合は、
>
> お客様は本ソフトウェアのいかなる部分でも配布することができます。
>
>でよいかもしれませんが、これが否定文になっている場合、つまり
>
>You may not distribute any portion of this software.
>
>の場合はどうしたらよいのでしょうか。
>
> お客様は本ソフトウェアのいかなる部分をも配布することができません。
>
> お客様は本ソフトウェアのいかなる(どの)部分もこれを配布することはできませ
>ん。
>
>こんな訳はどんなものでしょうか。
>
>よろしくお願いします。
>どちらが
>
>
>
>
はじめまして。お役に立てるかどうかわかりませんが、コメントさせていただきます。

英語には日本語表現にはない、plural(いわゆる名詞の後に付く"s"ですね)があります。そ
して名詞であってもこの "s" が着かない数えられない名詞というものもあります。sheep
という単語がその例です。調べるほど私は勉強熱心ではないので portion という単語を数
えられない名詞かどうかは調べていませんが、たぶんそうだと思います。(もし間違ってた
らごめんなさい)

ですからこの文の場合は無理に "any" を訳す必要はないと思います。
もしこの文に "any" がなかった場合、英文としては不完全な文章になります。なぜならば
このsorfwareの中には、いくつかのportionが含まれていて、それがsorfwareを形成して
いる訳ですよね。ですから、portionは複数ですので "any" がつく訳です。
もし "a portion" だった場合は、そのsorfwareの中のひとつだけのportionが配布可
能、と言うことですね。"The portion"だった場合は、前の文章内に出て、その話に触れ
られたportionのみだけが配布可能といった具合になると思います。

日本人は特にこの plural にとても弱く、私などよく (現在海外に滞在しています) 「君
はいつもplural を忘れる、本当に日本人なんだから。」とからかわれる毎日です。
英語の文章では名詞は数えるものと考えて会話がなされています。


トップに戻る
Re:ご教示くださいきゃでぃ 2751/20-03:27
 記事番号266へのコメント

翻訳独学生さんは No.265「ご教示ください」で書きました。
>ソフトウェアのライセンス契約書の中に、
>
>You may distribute any portion of this software.
>
>という表現が出てきた場合、みなさんはどのように訳出されているのでしょうか。

私のアプローチは、"Any"の意義と用法を分析してからというものです。
"Any"は実はとてもtrickyだと思います。あとに続く可算名詞も、それが単数で
あるか複数であるかの場合によって意味の使い分け(下記の例(2)
と(3)の"book"参照)が必要ですし。(不可算名詞については極めて分かり
やすいのですが。)私も英文を書く時はよく迷います。

以下は"Any"のtrickyな部分の定義をOxford Advanced Learner's Dictionary, 5th
ed.
から抜き出して、簡潔にまとめてみました。

(1) [used with uncountable nouns]---不可算名詞
(used instead of "some" in negative sentences and in questions)
an amount of something, however large or small
e.g.: I don't have any money.
e.g.: Do you know any French?

(2) [used with plural countable nouns]---可算名詞(複数)
(used instead of "some" in negative sentences and in questions)
one or more
e.g.: I've never read any books by Mishima.
e.g.: Are there any stamps in the drawer?

(3) [used with singular countable nouns]---可算名詞(単数)
one of a number of things, esp. when it does not matter which
e.g.: Take any book you like.
e.g.: Call me any day next week.

(4) [used with singular countable nouns in negative sentences
or sentences implying doubt]---可算名詞(単数)
a; one
e.g.: I can't see any door in this room.
e.g.: I doubt whether any company could have succeeded.

(5) [used with singular countable nouns]---可算名詞(単数)
every; no matter which
e.g.: You'll find me here at any hour of the day.
e.g.: Any train from this platform stops at Tokyo.

(2)と(4)は英文を書く際に迷うところだと思います。(3)と(5)は
英日翻訳の場合に考えなければならないところです。

とすると、"portion"は普通は標準的な可算名詞なので(単数と複数の形が同じである
"sheep"とは性質が異なります)、ご質問の例文には上記の(3)または(5)が
あてはまるということになります。(3)でしたら「ソフトの(文字どおり)一部」、
(5)でしたら「ソフトのいかなる部分でも」ということになると思いますが、
意味がかなり違いますよね。私の結論といたしましては、文の前後関係をみて、
翻訳者の判断にまかせる、ということになると思います。どちらがふさわしいか
判断つきかねる場合は、翻訳独学生さんのおっしゃるように、"Any"は無理に訳さない
ということになるでしょう(いずれにせよ訳さないほうが聞こえがいいかもしれません
ね)。
このバリエーションとしての否定文の場合は、「いかなる部分でも」というニュアンス
は確かですので、あとはこなれた日本語を選ぶといいのでしょうね。

"Any"の用法をまとめてみて、とても勉強になりました。


トップに戻る
Re:ご教示ください翻訳独学生 2761/20-07:52
 記事番号275へのコメント

きゃでぃさんは No.275「Re:ご教示ください」で書きました。

>私のアプローチは、"Any"の意義と用法を分析してからというものです。
>"Any"は実はとてもtrickyだと思います。あとに続く可算名詞も、それが単数で
>あるか複数であるかの場合によって意味の使い分け(下記の例(2)
>と(3)の"book"参照)が必要ですし。(不可算名詞については極めて分かり
>やすいのですが。)私も英文を書く時はよく迷います。
>
>以下は"Any"のtrickyな部分の定義をOxford Advanced Learner's Dictionary, 5th
>ed.
>から抜き出して、簡潔にまとめてみました。

ご丁寧な回答ありがとうございました。多くを学ばせていただきました。

>(3) [used with singular countable nouns]---可算名詞(単数)
>one of a number of things, esp. when it does not matter which
>e.g.: Take any book you like.
>e.g.: Call me any day next week.
>
>(4) [used with singular countable nouns in negative sentences
>or sentences implying doubt]---可算名詞(単数)
>a; one
>e.g.: I can't see any door in this room.
>e.g.: I doubt whether any company could have succeeded.
>
>(5) [used with singular countable nouns]---可算名詞(単数)
>every; no matter which
>e.g.: You'll find me here at any hour of the day.
>e.g.: Any train from this platform stops at Tokyo.

そうなんです。ここで取り上げられている例文のような文の訳出方法なんです。難しいな、と思ったもの
ですから...(これらを訳してみるのはよい勉強になりそうですね。人によって表現がかなり多様にな
りそうですね。)

たとえば、(5)の You'll find me here at any hour of the day. ですが、
これが否定文になると、
You won't find me here at any hour of the day. となるわけですね。
この否定文は
純粋に(5)の will find ...any hourを否定したものなのか、
それとも否定した場合には(4)にシフトするのか、
あるいは発意段階当初から(4)を意思するものなのか。
ネイティブの方々のマインドはどうなるんだろうか?ということなのです。
(言いたいことがうまく言い表せないですみません。)

また、これらに加えて代名詞としての anyが出てきますから、訳出は(日本語を書くのは)厄介ですね。

ちなみに、以下は某ABC社のあるソフトウェア製品ライセンス契約書(の禁止事項)の一部です。プロ翻
訳者をめざしておられる方の勉強(参考)にもなると思いましたので掲載させていただきます。この程度
の英文をわかりやすい正しい日本語で原意に正確に訳せるようになれたらいいなと思っています。

You may not (a) distribute in any manner any of the header files, source
code, template-based classes, independent static libraries of the
Software, or Documentation (including API documentation), (b) distribute
any portion of the Software or any derivative of any portion of the
Software in a software utility product or software development tool or
otherwise in competition with ABC's distribution of the Software,


>"Any"の用法をまとめてみて、とても勉強になりました。

プロの産業翻訳者として労しておられるきゃでぃさんの真摯な学びの姿勢に頭が下がります。
今後も本サイトにいろいろコメントください。どうぞよろしくお願いします。

小生の疑問に早速ご回答くださったogaloさん、ありがとうございました。


トップに戻る
Re:ご教示くださいきゃでぃ 2781/22-03:14
 記事番号276へのコメント

翻訳独学生さんは No.276「Re:ご教示ください」で書きました。

>たとえば、(5)の You'll find me here at any hour of the day. ですが、
>これが否定文になると、
>You won't find me here at any hour of the day. となるわけですね。
>この否定文は
>純粋に(5)の will find ...any hourを否定したものなのか、
>それとも否定した場合には(4)にシフトするのか、
>あるいは発意段階当初から(4)を意思するものなのか。
>ネイティブの方々のマインドはどうなるんだろうか?ということなのです。

否定にした場合には(4)にシフトするのだと思います(私の前回の投稿を参照してください)。
というのは、anyは否定にした場合に意味が極端に(180度)変わるからです。

(a-1) You'll find me here at any hour of the day.
は (a-2) You'll always find me here. とほぼ同じで、「いつも」の意味。
(b-1) You won't find me here at any hour of the day.
は (b-2) You will never find me here.とほぼ同じで、「けっして〜ない」の意味。

それでは中間は何かというと、
(c) You won't find me here at every hour of the day.
というのがあり、not alwaysと同じで「いつも〜というわけではない」の意味です。

ここで注意したいのは、はじめに(a-1)と (a-2) は同じ意味と書きましたが、
それぞれを否定にした場合は意味が違ってくるということです(試してください)。
ややっこしいですね。

上記の点は、アメリカ人の夫にも確認しました(彼は子どもの頃からフィクション、
ノンフィクションとまんべんなく読書をしてきておりますので、かなり語感はあるほうだと思います)。
また、彼に「こういうanyの使い方などは、ネイティブはどういうふうに考えているのか」
と尋ねたところ、「anyとnot〜anyの使い分けは感覚で身についていると思う。でも、
皆がこれを文法の規則としてきちんと説明できるかどうかは疑問だ」と言っておりました。
そういえば、日本人が日本語を説明することに対しても同じことが言えますよね。

>プロの産業翻訳者として労しておられるきゃでぃさんの真摯な学びの姿勢に頭が下がります。
>今後も本サイトにいろいろコメントください。どうぞよろしくお願いします。

「プロ」なんてものではないですよ・・・(笑)。企業内で細々と翻訳をさせていただいている
だけですから。でも、私もここでいろいろ考えさせていただき、日頃の業務にも役立っております。


トップに戻る
Re:ご教示ください翻訳独学生 2791/23-06:50
 記事番号278へのコメント

きゃでぃさんは No.278「Re:ご教示ください」で書きました。

>否定にした場合には(4)にシフトするのだと思います(私の前回の投稿を参照してください)。
>というのは、anyは否定にした場合に意味が極端に(180度)変わるからです。

ありがとうございました。
そうであるとすれば先にまとめてくださったanyの用法の(5)、すなわち
>
>(5) [used with singular countable nouns]---可算名詞(単数)
>every; no matter which

は、 [used with singular countable nouns in affirmative sentences]とした方が読者には親切かもしれま
せんね。たしかに、ここでのanyがeveryと無条件にequivalent/synonymous(はて、どちらが適当な形容詞でしょ
うか?)だとしてしまうと、否定文にするとご指摘のようにnot...everyの部分否定になってしまいますもの
ね。

ありがとうございました。よい勉強をさせていただきました。