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-意味の狭い日本語の単語、意味の広い英単語- Lee(7/16-16:01)No.575
 ┗Re:意味の狭い日本語の単語、意味の広い英単語- kyotag(7/16-22:02)No.576
  ┗役職や地位を表す日本語と英語- Lee(7/16-23:18)No.577
   ┣役職や地位の他にも・・・- なな(7/17-00:12)No.578
   ┃┗Re:役職や地位の他にも・・・- ソーデン(7/17-13:25)No.581
   ┗Re:役職や地位を表す日本語と英語- かふぇ(7/17-04:25)No.579
    ┗Re:役職や地位を表す日本語と英語- かふぇ(7/17-06:19)No.580
     ┗Re:役職や地位を表す日本語と英語- Lee(7/17-16:00)No.582
      ┣Re:役職や地位を表す日本語と英語- たろこ(7/17-21:34)No.583
      ┣Re:役職や地位を表す日本語と英語- kyotag(7/18-03:26)No.584
      ┃┗Re:役職や地位を表す日本語と英語- かふぇ(7/18-04:12)No.585
      ┃ ┣Re:役職や地位を表す日本語と英語- sabine(7/18-08:57)No.587
      ┃ ┗Re:役職や地位を表す日本語と英語- kyotag(7/18-13:50)No.588
      ┗Love: お大切- ソーデン(7/18-07:26)No.586
       ┗Re:Love: お大切- kyotag(7/18-14:01)No.589
        ┗Re:Love: お大切- ソーデン(7/19-11:41)No.590
         ┗Re:Love: お大切- kyotag(7/19-15:57)No.593


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意味の狭い日本語の単語、意味の広い英単語Lee 5757/16-16:01

いつも気にかかっている日本語と英語の小さな問題について、
ここで述べさせていただきます。
このウェブ喫茶店では、「ふいんき」や「シュミレーション」など、
日本語の面白い言い回しについての感想などを述べることも
許されているらしいので、私のこの話題も、
ここで述べることが許されるかな、と思ったのです。

ただし、私は日本語のネイティブであり、英語の能力は
まだ十分ではないため、もしトンチンカンなことを言っていれば、
どうぞご指摘ください。

漢語由来の(あるいは漢語のように見える)言葉を初めとして、
日本語の単語には、それに対応する英単語に比べて、一般的に、
非常に意味が狭いと思えます。
一つの英単語の概念の範囲には、いくつもの日本語の単語の概念が
包み込まれてしまうこともよくあります。

たとえば、職業や地位を表す言葉。
ダンスをする、踊りを踊る人は、日本語で
「ダンサー」。他にも「舞踏家」「舞踊家」などという
言葉もあるかもしれませんが、これら二つの漢語が
どのように実際に使われているかしりませんので、
「ダンサー」という言葉だけを例に挙げてみましょう。
日本語で「ダンサー」というと、普通はダンスを
職業的に行っている人を指します。
ダンスホールへ行って、そこで踊っている友人の
ダンスがうまいと、日本語では
「ダンスがうまいね」
と誉めます。
しかしこれを英語では、
You dance well.
ということもありますが、
You're a good dancer.
と言うことがけっこう多いでしょう。
ダンスのうまい、その友人は、
ひょっとしたら生まれて初めてダンスをしているのかも
しれない。あるいは1ヶ月に一度しかダンスをしていない
かもしれない。いずれにしても、決してプロのダンサーでは
ない。なのにその友人は、dancer と呼ばれます。
英語ではこのように、今たまたま一度だけ行っている
(あるいは行った)活動を見て、「その活動をする人」を
表す単語(...er とか...or、あるいは ...ist などで終わる単語)
でその人を表現するのです。

だから、生まれて初めて踊っているかもしれない人を
dancer と呼び、もしその人がプロの dancer なら
professional dancer と呼ぶ。

同じように、一人だけを殺した人を killer とか
murderer と呼び、一度だけウソをついた人に向かって
liarと呼ぶ。
murderer とか killer を訳すとき、うっかり
「殺し屋」という定着した、歴史の長い日本語に訳してしまうと、
「何人もの人間を殺してきた人、恐らくは職業的に人を殺している人」
を指してしまいます。「殺人者」と訳せば、英語の単語の表す意味に
近いんでしょうが、残念なことに、この日本語「殺人者」は
とても堅い日本語です。少なくとも、小学生が使う言葉ではありません。
大人でも、少し居住まいを正している、少し気取っているときでないと
この「殺人者」という言葉は使いません。
それとは逆に、murderer とか killer という英語は、小学生でも
使っています。

President という単語を考えてみましょう。
学校の生徒会の会長も president、会社の社長も president、
学会や団体などの長も president、大統領もpresident...。
英語の president という言葉が表す意味の範囲はとても広く、
日本語の会長や社長や大統領などの言葉が持つ意味の範囲は
とても狭いようです。
アメリカの高校の新聞部部長のことを、英語では何というか?
editor in chief と言っているようです。
この editor in chief という表現を英和辞典で引くと、
「編集長、編集主任、主筆、主任記者」となっており、
どの日本語も、実社会での新聞社や雑誌社での地位を
表す言葉として使われるのが普通です。
学校の新聞部の「編集長」らしき人は、「新聞部部長」
などと呼ばれていると思います。
「編集長」とか「主筆」などと言おうものなら、
「何を大げさな」と笑われます。
このように、日本語では、新聞社など、職業的に
新聞などを発行する組織において編集業務を
行う人の中で最も地位の高い人と、
学校などでそれとよく似た作業を行う人とが、
まったく別の言葉で表現される、というわけです。

同じような例が、いくつでも挙げられます。
psychologist を和訳すると、どうなるでしょう?
「心理学者」というのが、日本で育って日本語で
教育を受けてきた私たちが普通に思い浮かぶ訳語でしょう。
ところが、英語の psychologist という概念は、
大変意味の範囲が広い。大学で心理学を教えている
教授・助教授・講師だけでなく、psychology を
大学で4年間勉強しただけで、そのあとカウンセラーの
ような仕事をしている人も psychologist と
呼ばれているようです。おまけに、大学で
心理学を専攻している、ただの学生も
psychologist と呼ばれているようです。
同じように、哲学を専攻する学生も philosopher。
したがって、Immanuel Kant や Hegel などの
歴史に残る有名な大哲学者も、一介の哲学専攻の
学生も、双方ともに philosopher なのです。
ひょっとすると、大学でそのような学問を専攻したことのない
人でも、そのように呼ばれることがあるかもしれません。
というのは、考古学めいた学問が好きで、
「僕らは考古学を趣味でやってるんですが・・・」
というような自己紹介を英語で何というかというと、
"We are amateur archeologists."
ということです。

このように考えていくと、architect は「建築家」というような
大げさなものではなく、musician は「ミュージシャン」や
「音楽家」というような大げさなものではないのです。
英語の世界に身を置くと、それらの単語は、実は日本語の中で
対応する言葉のない、もっと軽い、もっと広い意味の言葉
なのです。

以上、釈迦に説法のような話をしてしまいましたが、
私のようにあまり英語のできない日本語ネイティブにとっては、
これだけでもけっこう大きな発見だったのです。
それで、あえてここで独り言のように述べさせていただきました。
本当は、もっと話し続けたいですが、ファイルが大きくなりすぎます
ので、ここで終えます。

以上です。

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Re:意味の狭い日本語の単語、意味の広い英単語kyotag 5767/16-22:02
 記事番号575へのコメント

Leeさん、面白いお話を有り難うございます。
ここで挙げておられたいろいろな例は、日本語の敬語表現や、謙虚さを重んじる
日本の文化と関係があるのではないかと思います。

かといって、英語に謙遜表現がないかといえば、そうではなくて、言葉自体には
なくても、言い回しでカバーする例が多いような気がします。

が、とくに職業や地位については、少なくとも、その職責についている限り、ど
んな若い人でもDirectorやPresidentと呼ばれますし、尊敬を受けるかどうか
は、その人の実際の仕事内容、やり方、実力のほうであって、肩書きでは無いよ
うな気がします。若い人でも実力があれば認めてもらえる社会の考え方を反映し
ているようですし、また生徒や学生でもLeaderとしての役割をになっている人に
は、それに応じた役職名が与えられます。

というわけで、

>「編集長」とか「主筆」などと言おうものなら、
>「何を大げさな」と笑われます。

アメリカでは、たぶん「がんばってるね」ということになるだけで、笑う人はい
ないでしょう。日本で小学校、中学校時代を過ごした私にとっては、アメリカの
小中学生の方が、すこし大人びていて、また張り切って自分から役職について頑
張っているような気がします。自分は小学生だから、とか、中学生だから、と自
分のやりたいことにキャップをすることもありません。もちろん、大人と同じレ
ベルの仕事が求められいるわけではありませんが。

私が大学を出て外資に入社した時、Marketing Specialistというタイトルをも
らって、お客さんから結構「?」という反応をいつも受けました。「スペシャリ
ストとはまた・・・。あなた新卒でしょう?」といいたげな感じだったので、
「これはGeneralistの逆で、現在Marketingの分野にしぼって修行させて頂いて
いるという事ですので、宜しくお願いいたします」等の「解説」が必要でした。
でも、今アメリカで数年働いた後考えると、どうして会社の職責名にすぎないこ
とで、いちいち説明しなくてはならなかったんだろう、とも思えます。結局は、
自分の実力と、仕事内容ではないか、と思えるんですよね(まあ、日本の会社に
もしばらくいましたから、事情はわかりますが)。

10年後、アメリカで大学院をでて、日本で勤めていた時と同じ会社の本社に採用
になりました。お給料も倍になっていましたし、仕事内容ももちろん変わってい
ましたが、そこでもMarketing Specialistでした(笑)。






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役職や地位を表す日本語と英語Lee 5777/16-23:18
 記事番号576へのコメント

さすが、日米両国の一般の文化と企業文化とにお詳しい kyotag さん、
私の痒(かゆい)いところに手が届くようなコメントを頂きまして、
ありがとうございます。

>ここで挙げておられたいろいろな例は、
>日本語の敬語表現や、謙虚さを重んじる
>日本の文化と関係があるのではないかと思います。

同感です。

>が、とくに職業や地位については、少なくとも、その職責についている限り、
>どんな若い人でもDirectorやPresidentと呼ばれます・・・・
>アメリカの小中学生の方が、すこし大人びていて、
>また張り切って自分から役職について頑張っているような気がします。
>自分は小学生だから、とか、中学生だから、と自分のやりたいことに
>キャップをすることもありません。

このお話に関連することですが、私はアメリカで人気を博した sitcom である
Doogie Howser, M.D.を観ていたとき、その登場人物の16才の Vinnie が

I'm a cinematographer.

と言ったことに驚きました。日本で言えば高校一年生のこの少年は、
映画を作るのが好きで、(一般の日本人に言わせれば
この少年が作っていたものを「映画」というのは大げさで、
ただのビデオじゃないか、とも言えますが)
学校の授業科目に「映画」の時間があるらしいのですが、
その科目を熱心に受講しています。映画を作ってギャラをもらったことは
決してないのです。なのに彼は、I'm a cinematographer.と言ったのです。
これを英和辞典の言うとおりに「カメラマン、映写技師」などと訳そうものなら、
なんとおこがましい、生意気な高校生、という謗(そし)りを受けるでしょう。
ここで彼が言った台詞は、大げさな言い方として言ったものかな、
とも思いましたが、そのあとにいろんな英語を聴いてきて、、
どうやら英語では、大げさでなく、おこがましいわけでもなく、
素人の人もプロの人も、子供も大人も、駆け出しの者も名人や大家も、
基本的には同じ言葉で呼ばれているらしい、ということがわかってきました。
たったそれだけのことを、長年勉強してきて、やっと今になって気づいたか、
と笑われそうですが、でも、けっこうたくさんの日本語ネイティブが
私と同じように、簡単なことになかなか気づかないのではないか、
と思っています。
その証拠に、これだけ英和辞典や英英辞典が発達してきたにもかかわらず、
いまだに philosopher の訳として「哲学科学生」、psychologist の
訳として「心理カウンセラー」などという軽い訳語が
あまり取り上げられません。

日本語で産業翻訳者である私たちは、「翻訳者」と呼ばれています。
よほどの大家にならないかぎり「翻訳家」とは呼ばれません。
その逆に、出版翻訳者は、「翻訳家」と呼ばれることが多いように
思います。「・・・家」をつけると、かなり格が上となります。
おそらく英語では、産業翻訳者も出版翻訳者も translator であり、
それだけでなく駆け出しも大家もみな、translator ではないかと
思います。
(「思います」とか、「・・・のようです」とよく私は
言いますが、今まで日本語ネイティブの私が英語を聞いたり
読んだりしてきた限られた経験の範囲内でものを言っているため、
断言ができないのです。もし、少しでもずれたことを言っていましたら、
どなたでも、どのようなささいなことでもよろしいですから、
ぜひ指摘してください。)

ある学者の研究によると、フランス人がフランス語で日常会話をするのに
必要な単語数は、1,000語(千語)くらいで、日本人が日本語で同じレベルの
日常会話をするのには、10,000語(一万語)必要だ、という話を聞いたこと
があります。これは、あながち根拠の薄い話とも思えません。
フランス語の場合と英語の場合では、状況は違うとはいえ、日本語と英語との
あいだにも、上記のような日本語とフランス語とのあいだの違いと
よく似たものが見られるものと想像します。
つまり、日本語の単語一つ一つの意味の範囲は非常に狭く、西洋語の単語
のそれは非常に広い、ということなのです。その結果、日本語では
たくさんの単語を知っていないと日常会話さえできない。
その逆に、西洋語では、少しの単語さえ知っていれば、日常会話が
こなせる。このような事情のゆえに、高校生で英語を習った程度の
英語力しかない日本語ネイティブにとってさえ、
西洋語の方が使いやすい、読みやすい、理解しやすいと感じられることが
多いわけです。

またまた、長くなってしまいました。
際限なくしゃべってしまいそうなので、
ここで強引に話を終わります。
何かコメントがありましたら、
どなたでも、どんなことでもお聞かせ願えると、
たいへん光栄です。
ありがとうございました。

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役職や地位の他にも・・・なな 5787/17-00:12
 記事番号577へのコメント

こんにちは。

私もこの日本語と英語の意味の範囲の違いには今だに毎日のよ
うに驚かされております。

役職や地位の他に、一般単語でも全く異なった複数の意味をもつ
単語が多い(というか1つの意味しかもたない単語の方が少ない
くらい?!)ですよね。最も顕著なのがworkだと思いますが、こ
れが意味するものは概念的には同じなのであまり混乱はしません。
しかし、全く関連性のない、あるいは逆の概念を複数もつ単語には、
なぜこれらの意味を同一の単語で示さなければならないのだろうか
と思ってしまいます(当然、歴史的背景から由来していると思いま
すが)例えばcompromise。これは通常「妥協する」の意味が日本人
には一般的ですがjeopardizeと同じ意味で使われることも多いです
よね。また、sanctionという単語は本当に不思議です。名詞では
「制裁」という意味で使用され、動詞では「認可する」という意味
になる。これらは全く逆の意味じゃないですか。大抵の場合は文全体
から適切な意味を判断することが可能ですが、私が以前通っていた
通訳学校の講師(トップクラスの通訳です)は、justiceという単語は
いつも訳しにくいと言ってました。「正義」、「司法」、「公平」、
「裁判」・・・日本語訳はいくらでもあります。これらはみな、日本語
(あるいは漢語としても)全く別の概念を表しているのに、英語では
1単語です。思わず「英語は未発達な言語なのか・・・」と考えてしま
います。

ただ、英語の単語の概念が広いため、日英翻訳するには非常にありが
たいですよね。私は現在建築関係の翻訳をしておりますが、「設置す
る」だろうが「取り付ける」だろうが「据え付ける」だろうが、その
ような概念の言葉には何でも「install」と使ってしまえばいいし、
この方が安全です。ボキャ貧なため英日翻訳で苦しんでいる私も、
日英では楽させてもらっています。


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Re:役職や地位の他にも・・・ソーデン 5817/17-13:25
 記事番号578へのコメント


ななさん、皆さん、こんにちは。


|justiceという単語はいつも訳しにくいと言ってました。「正義」、「司法
|」、「公平」、「裁判」・・・日本語訳はいくらでもあります。これらは
|みな、日本語(あるいは漢語としても)全く別の概念を表しているのに、
|英語では1単語です。思わず「英語は未発達な言語なのか・・・」と考え
|てしまいます。


次のように考えてみてはいかがでしょう。

●名詞から属性が分離されている

単語は一つでも、「定冠詞/不定冠詞」「countable/uncountable」「単数
/複数」によって意味の範囲が特定されるはずです。さらに、これらを組み
合わせることによって(文脈にも依存する)、より細かく意味が仕切られる
はずです。ですから高度に抽象された「正義」という概念から、かなり具体
的な「最高裁判事」まで同じ単語でまかなえるのだと思います。

我々の内面にこれに対応する仕組みがないので、名詞と属性の分離を把握し
にくいのでしょう。また母国語を通じて訓練されていないので、それらを必
要に応じて組み合わせる(駆使する)ことも容易ではありません。

ネイティブ達は、我々のものとはかなり異なるフィルターを通して外界を眺
めているようです。同じフィルターを手に入れたいのですが、私にはできそ
うにありません。やっかいですね。

以上の点と、ななさんが使いやすいと感じられている単語が動詞(install)
であることは、無関係ではないかもしれません。


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Re:役職や地位を表す日本語と英語かふぇ 5797/17-04:25
 記事番号577へのコメント

Leeさんは No.577「役職や地位を表す日本語と英語」で書きました。
>さすが、日米両国の一般の文化と企業文化とにお詳しい kyotag さん、
>私の痒(かゆい)いところに手が届くようなコメントを頂きまして、
>ありがとうございます。
>
>>ここで挙げておられたいろいろな例は、
>>日本語の敬語表現や、謙虚さを重んじる
>>日本の文化と関係があるのではないかと思います。
>
>同感です。
>
>>が、とくに職業や地位については、少なくとも、その職責についている限り、
>>どんな若い人でもDirectorやPresidentと呼ばれます・・・・
>>アメリカの小中学生の方が、すこし大人びていて、
>>また張り切って自分から役職について頑張っているような気がします。
>>自分は小学生だから、とか、中学生だから、と自分のやりたいことに
>>キャップをすることもありません。
>
>このお話に関連することですが、私はアメリカで人気を博した sitcom である
>Doogie Howser, M.D.を観ていたとき、その登場人物の16才の Vinnie が
>
>I'm a cinematographer.
>
>と言ったことに驚きました。日本で言えば高校一年生のこの少年は、
>映画を作るのが好きで、(一般の日本人に言わせれば
>この少年が作っていたものを「映画」というのは大げさで、
>ただのビデオじゃないか、とも言えますが)
>学校の授業科目に「映画」の時間があるらしいのですが、
>その科目を熱心に受講しています。映画を作ってギャラをもらったことは
>決してないのです。なのに彼は、I'm a cinematographer.と言ったのです。
>これを英和辞典の言うとおりに「カメラマン、映写技師」などと訳そうものなら、
>なんとおこがましい、生意気な高校生、という謗(そし)りを受けるでしょう。
>ここで彼が言った台詞は、大げさな言い方として言ったものかな、
>とも思いましたが、そのあとにいろんな英語を聴いてきて、、
>どうやら英語では、大げさでなく、おこがましいわけでもなく、
>素人の人もプロの人も、子供も大人も、駆け出しの者も名人や大家も、
>基本的には同じ言葉で呼ばれているらしい、ということがわかってきました。
>たったそれだけのことを、長年勉強してきて、やっと今になって気づいたか、
>と笑われそうですが、でも、けっこうたくさんの日本語ネイティブが
>私と同じように、簡単なことになかなか気づかないのではないか、
>と思っています。
>その証拠に、これだけ英和辞典や英英辞典が発達してきたにもかかわらず、
>いまだに philosopher の訳として「哲学科学生」、psychologist の
>訳として「心理カウンセラー」などという軽い訳語が
>あまり取り上げられません。
>
>日本語で産業翻訳者である私たちは、「翻訳者」と呼ばれています。
>よほどの大家にならないかぎり「翻訳家」とは呼ばれません。
>その逆に、出版翻訳者は、「翻訳家」と呼ばれることが多いように
>思います。「・・・家」をつけると、かなり格が上となります。
>おそらく英語では、産業翻訳者も出版翻訳者も translator であり、
>それだけでなく駆け出しも大家もみな、translator ではないかと
>思います。
>(「思います」とか、「・・・のようです」とよく私は
>言いますが、今まで日本語ネイティブの私が英語を聞いたり
>読んだりしてきた限られた経験の範囲内でものを言っているため、
>断言ができないのです。もし、少しでもずれたことを言っていましたら、
>どなたでも、どのようなささいなことでもよろしいですから、
>ぜひ指摘してください。)
>
>ある学者の研究によると、フランス人がフランス語で日常会話をするのに
>必要な単語数は、1,000語(千語)くらいで、日本人が日本語で同じレベルの
>日常会話をするのには、10,000語(一万語)必要だ、という話を聞いたこと
>があります。これは、あながち根拠の薄い話とも思えません。
>フランス語の場合と英語の場合では、状況は違うとはいえ、日本語と英語との
>あいだにも、上記のような日本語とフランス語とのあいだの違いと
>よく似たものが見られるものと想像します。
>つまり、日本語の単語一つ一つの意味の範囲は非常に狭く、西洋語の単語
>のそれは非常に広い、ということなのです。その結果、日本語では
>たくさんの単語を知っていないと日常会話さえできない。
>その逆に、西洋語では、少しの単語さえ知っていれば、日常会話が
>こなせる。このような事情のゆえに、高校生で英語を習った程度の
>英語力しかない日本語ネイティブにとってさえ、
>西洋語の方が使いやすい、読みやすい、理解しやすいと感じられることが
>多いわけです。
>
>またまた、長くなってしまいました。
>際限なくしゃべってしまいそうなので、
>ここで強引に話を終わります。
>何かコメントがありましたら、
>どなたでも、どんなことでもお聞かせ願えると、
>たいへん光栄です。
>ありがとうございました。
>


こんにちは。

長年海外に住んでいるので、日本語と英語を、できたらどちらも上手くなりたいなと思っ
て勉強しているところです。思ったよりずっと難しい。言葉を使うということが、いかに
複雑な過程であるか、今再認識しているところです。

英語だとか、日本語だとか、言葉を比較するのは難しく、私の場合、そう云う感覚で考え
る事をやめてしまいました。どちらも、とても難しい。見なれない、長いスペルの言葉ば
かりの文章(英語の場合)、漢字を連ねている(日本語の場合)文章など、いろいろありま
すが、難しいそうにみえてそうでもない文章もあれば、その正反対の場合も多いです。著
者が“何を言っているか“(content)だけではなく、“如何に言っているか”(style)まで
も訳せるようになったら、本当に翻訳の達人ということになるのでしょう。理由あって、
著者は、この言葉を選び、こういう書き方をしているのですから。

言葉の難しさは、それが孤立したものではなく、言葉には歴史があり(価値観、政治など
も含めて)ひとつ、ひとつの言葉は孤立して生まれるのではなく、ある歴史の過程で、家
族のなかで生まれて、家系があり、先祖があるということだと思います。(輸入されて、
移語(移民のように)として日本にやってきた言葉は、その過程で、先祖、家系を失ってし
まって“孤立”した言葉になる場合も多いようですが。)
psychology (psycho + logy) にしても philosophy (philo + sophia)にしても、い
とこ、兄弟、先祖がいますよね。
何故、philosophy が 哲の学と訳されたのか、私も知りたいです。そう訳されると、心理
学、医学、経済学、といろいろな学問が従兄妹になりますが、“知る/考える”ということ
を愛する、という意味の philosophy も失いたくないと思います。

留学した時、初めてphilos の意味を教えてもらって、へーと感激して、Philadelphia が
好きになり、philanthropy だのなんだのと、英語の単語を増やして得意になっていた
ら、 Abnormal psychology を取らされて、pedophilia,やら necrophilia 等々習わさ
れて、まったくphile が嫌いになりました。言葉が持っている”感情”は訳されない場合
が多いのですが、とても深いと思います。

感想を述べさせてもらいました。


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Re:役職や地位を表す日本語と英語かふぇ 5807/17-06:19
 記事番号579へのコメント

かふぇさんは No.579「Re:役職や地位を表す日本語と英語」で書きました。
>Leeさんは No.577「役職や地位を表す日本語と英語」で書きました。
>>さすが、日米両国の一般の文化と企業文化とにお詳しい kyotag さん、
>>私の痒(かゆい)いところに手が届くようなコメントを頂きまして、
>>ありがとうございます。
>>
>>>ここで挙げておられたいろいろな例は、
>>>日本語の敬語表現や、謙虚さを重んじる
>>>日本の文化と関係があるのではないかと思います。
>>
>>同感です。
>>
>>>が、とくに職業や地位については、少なくとも、その職責についている限り、
>>>どんな若い人でもDirectorやPresidentと呼ばれます・・・・
>>>アメリカの小中学生の方が、すこし大人びていて、
>>>また張り切って自分から役職について頑張っているような気がします。
>>>自分は小学生だから、とか、中学生だから、と自分のやりたいことに
>>>キャップをすることもありません。
>>
>>このお話に関連することですが、私はアメリカで人気を博した sitcom である
>>Doogie Howser, M.D.を観ていたとき、その登場人物の16才の Vinnie が
>>
>>I'm a cinematographer.
>>
>>と言ったことに驚きました。日本で言えば高校一年生のこの少年は、
>>映画を作るのが好きで、(一般の日本人に言わせれば
>>この少年が作っていたものを「映画」というのは大げさで、
>>ただのビデオじゃないか、とも言えますが)
>>学校の授業科目に「映画」の時間があるらしいのですが、
>>その科目を熱心に受講しています。映画を作ってギャラをもらったことは
>>決してないのです。なのに彼は、I'm a cinematographer.と言ったのです。
>>これを英和辞典の言うとおりに「カメラマン、映写技師」などと訳そうものなら、
>>なんとおこがましい、生意気な高校生、という謗(そし)りを受けるでしょう。
>>ここで彼が言った台詞は、大げさな言い方として言ったものかな、
>>とも思いましたが、そのあとにいろんな英語を聴いてきて、、
>>どうやら英語では、大げさでなく、おこがましいわけでもなく、
>>素人の人もプロの人も、子供も大人も、駆け出しの者も名人や大家も、
>>基本的には同じ言葉で呼ばれているらしい、ということがわかってきました。
>>たったそれだけのことを、長年勉強してきて、やっと今になって気づいたか、
>>と笑われそうですが、でも、けっこうたくさんの日本語ネイティブが
>>私と同じように、簡単なことになかなか気づかないのではないか、
>>と思っています。
>>その証拠に、これだけ英和辞典や英英辞典が発達してきたにもかかわらず、
>>いまだに philosopher の訳として「哲学科学生」、psychologist の
>>訳として「心理カウンセラー」などという軽い訳語が
>>あまり取り上げられません。
>>
>>日本語で産業翻訳者である私たちは、「翻訳者」と呼ばれています。
>>よほどの大家にならないかぎり「翻訳家」とは呼ばれません。
>>その逆に、出版翻訳者は、「翻訳家」と呼ばれることが多いように
>>思います。「・・・家」をつけると、かなり格が上となります。
>>おそらく英語では、産業翻訳者も出版翻訳者も translator であり、
>>それだけでなく駆け出しも大家もみな、translator ではないかと
>>思います。
>>(「思います」とか、「・・・のようです」とよく私は
>>言いますが、今まで日本語ネイティブの私が英語を聞いたり
>>読んだりしてきた限られた経験の範囲内でものを言っているため、
>>断言ができないのです。もし、少しでもずれたことを言っていましたら、
>>どなたでも、どのようなささいなことでもよろしいですから、
>>ぜひ指摘してください。)
>>
>>ある学者の研究によると、フランス人がフランス語で日常会話をするのに
>>必要な単語数は、1,000語(千語)くらいで、日本人が日本語で同じレベルの
>>日常会話をするのには、10,000語(一万語)必要だ、という話を聞いたこと
>>があります。これは、あながち根拠の薄い話とも思えません。
>>フランス語の場合と英語の場合では、状況は違うとはいえ、日本語と英語との
>>あいだにも、上記のような日本語とフランス語とのあいだの違いと
>>よく似たものが見られるものと想像します。
>>つまり、日本語の単語一つ一つの意味の範囲は非常に狭く、西洋語の単語
>>のそれは非常に広い、ということなのです。その結果、日本語では
>>たくさんの単語を知っていないと日常会話さえできない。
>>その逆に、西洋語では、少しの単語さえ知っていれば、日常会話が
>>こなせる。このような事情のゆえに、高校生で英語を習った程度の
>>英語力しかない日本語ネイティブにとってさえ、
>>西洋語の方が使いやすい、読みやすい、理解しやすいと感じられることが
>>多いわけです。
>>
>>またまた、長くなってしまいました。
>>際限なくしゃべってしまいそうなので、
>>ここで強引に話を終わります。
>>何かコメントがありましたら、
>>どなたでも、どんなことでもお聞かせ願えると、
>>たいへん光栄です。
>>ありがとうございました。
>>
>
>
>こんにちは。
>
>長年海外に住んでいるので、日本語と英語を、できたらどちらも上手くなりたいなと思っ
>て勉強しているところです。思ったよりずっと難しい。言葉を使うということが、いかに
>複雑な過程であるか、今再認識しているところです。
>
>英語だとか、日本語だとか、言葉を比較するのは難しく、私の場合、そう云う感覚で考え
>る事をやめてしまいました。どちらも、とても難しい。見なれない、長いスペルの言葉ば
>かりの文章(英語の場合)、漢字を連ねている(日本語の場合)文章など、いろいろありま
>すが、難しいそうにみえてそうでもない文章もあれば、その正反対の場合も多いです。著
>者が“何を言っているか“(content)だけではなく、“如何に言っているか”(style)まで
>も訳せるようになったら、本当に翻訳の達人ということになるのでしょう。理由あって、
>著者は、この言葉を選び、こういう書き方をしているのですから。
>
>言葉の難しさは、それが孤立したものではなく、言葉には歴史があり(価値観、政治など
>も含めて)ひとつ、ひとつの言葉は孤立して生まれるのではなく、ある歴史の過程で、家
>族のなかで生まれて、家系があり、先祖があるということだと思います。(輸入されて、
>移語(移民のように)として日本にやってきた言葉は、その過程で、先祖、家系を失ってし
>まって“孤立”した言葉になる場合も多いようですが。)
>psychology (psycho + logy) にしても philosophy (philo + sophia)にしても、い
>とこ、兄弟、先祖がいますよね。
>何故、philosophy が 哲の学と訳されたのか、私も知りたいです。そう訳されると、心理
>学、医学、経済学、といろいろな学問が従兄妹になりますが、“知る/考える”ということ
>を愛する、という意味の philosophy も失いたくないと思います。
>
>留学した時、初めてphilos の意味を教えてもらって、へーと感激して、Philadelphia が
>好きになり、philanthropy だのなんだのと、英語の単語を増やして得意になっていた
>ら、 Abnormal psychology を取らされて、pedophilia,やら necrophilia 等々習わさ
>れて、まったくphile が嫌いになりました。言葉が持っている”感情”は訳されない場合
>が多いのですが、とても深いと思います。
>
>感想を述べさせてもらいました。
>


書き忘れていましたが、psychologist の タイトルは米国、カナダ等々、国によって法的に定め
られていると思います。また、心理学にもいろいろの専攻があり、clinical psychologist が
他の専攻の psychologist と名乗ることも、その反対もできません。 counseling と
clinical psychologist では、大学院の学科、課程、資格に必要な条件、経歴とまた違いま
す。experimental psychologist となるとまた違いますね。心理学の研究の分野がはっきりとし
ているわけでもなく、言語学、AI研究など、他の学の学者達とともに、言語、AIなど研究して
いる心理学者は多いですよね。
現在、心理学者のタイトルはいろいろあり、普通、博士号、インターンシップ(clinical の場
合)、その他があって、長い過程の後、名乗れます。(例外の修士号の場合、それに関する条件が
満たされて無いといけません)
専門組織、APA,CPAなどがメンバーの、professional conduct を管理します。

心理カウンセラーと言うタイトルも資格も国によって違うのではないでしょうか?


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Re:役職や地位を表す日本語と英語Lee 5827/17-16:00
 記事番号580へのコメント

kyotagさん、ななさん、ソーデンさん、かふぇさん、
みなさんのコメントにより、たいへん勉強になります。

<かふぇさんの言葉>
>言葉の難しさは、それが孤立したものではなく、
>言葉には歴史があり(価値観、政治なども含めて)ひとつ、ひとつの言葉は
>孤立して生まれるのではなく、ある歴史の過程で、家族のなかで生まれて、
>家系があり、先祖があるということだと思います。
>輸入されて、移語(移民のように)として日本にやってきた言葉は、
>その過程で、先祖、家系を失ってしまって“孤立”した言葉になる場合も
>多いようですが。

とても含蓄のある、洞察の深いお言葉です。
日本語には、そういう意味で家族を失った「孤立した」単語が
あまりにもたくさんあり、日常生活では何とかそれらの「孤立した」単語を
あまり使わなくてもすみますが、ほんのちょっと抽象的な話になると、
とたんにそれらの「孤立した」単語が溢(あふ)れ返る。
いちおう、別の地域や言語文化圏で使われていた単語が輸入されて
その結果として孤立したのならともかく、日本語には
おびただしい造語があります。
あるいは、もともと日本語や漢語に
あったけれども、新しい意味を持たされた単語も、これまた多い。
そのため、日本語はとても難しい言葉になってしまっている。

かふぇさんはこのあと、次のファイルで、psychologist という言葉が
英語圏で実際にどう使われているかを詳しくご紹介くださいました。
深く感謝します。

私は、かふぇさんが挙げてくださった psychologist の用例などの
情報をもっと大量に仕入れ、頭に叩き込み、
それを総合して、それぞれの英単語や日本語の単語が
どのような頻度で、どのような場合に、どのような重みで
(どのようなインパクトを持たせて)使われているかを
知りたいと、いつも思っています。
そうすれば、日英の両言語の本質的な部分や文化などが見えてくるような
気がします。

具体的に、しかも簡単な例を挙げると、
- I'm in love with you.
- I love you.
- I like you.
- I'm fond of you.
これらの表現は、どのような場合に、どのような重みで使われるのか?
どのような日本語に訳すのが最も的確なのか?

"I love you." この言葉はとてもポピュラーですが、
この簡単そうに見える言葉でさえ、きちんとした日本語には
なかなかならない。「愛してるわ」という訳文は、どうも当てはまらない。
「愛してるわ」という日本語は、あえていうなら
"I'm madly in love with you."あたりの表現にいくらか近いのではないで
しょうか?
でも、この"I'm madly in love with you."でさえ、
どちらかというと「あなたに夢中よ」とか「好きでたまらない」と
いう程度の軽さを持った英語なのではないでしょうか?
とてもじゃないけれども、「愛」という言葉を使って訳すことは
できそうもない。
日本語ネイティブは、「愛」という言葉を
歴史的にあまり使ってこなかったのです。
その反面、英語の love は、きわめて頻繁に、きわめて広い範囲の
状況で使われるため、結果として意味が軽くなる。
"I love you."は、姉と妹とのあいだでも使うし、兄と弟のあいだ、
男の上司と男の部下とのあいだ、男の友人どうし、女の友人どうし、
そして男の映画監督に向かって男のファンが使うこともあります。
もちろん、親子のあいだでも使います。
それらの状況で使われる"I love you."が、恋人どうし、夫婦のあいだ
でも使われるわけです。

"I love you."は、このようにしてきわめて広範囲の状況で
使われるため、「君はほんとにいい奴だ」「あなたってほんとに
いい人ね」くらいの意味合いしかないのではないでしょうか?
だから、日本語ネイティブが、恋人同士や夫婦間で「愛しているよ」
と、照れくさくて言えないのも、無理ないことなのです。
だって、アメリカ人でさえ、"I love you."という日本語の
「愛している」に比べてはるかに軽い意味を持っていると思われる
言葉を恋人に対して口にできない、親子のあいだで口にできない
人も多いと聞きます。

映画の例を挙げると、"Ghost"(「ゴースト」)という映画の中で、
Patrick Swayze がその恋人である Demi Moore に向かって
"I love you."とはどうしても言えず、"Ditto."(上に同じ)としか
言えない、というシーンが出てきます。
あるいは、アイルランドに住むアイルランド人のあいだでは、
少なくとも以前は、親子のあいだで"I love you."とは言えない、
そんなことを言うのは恥ずかしいことである、と
映画"Angela's Ashes"(「アンジェラの灰」)の中で言われて
います。

そのように、西洋人でさえそうなのだから、日本語ネイティブが
このきわめて思い言葉「愛」を口にできないのは、当然のことと
思います。

「神の愛」という、キリスト教における大切な考え方が
なかなか日本に定着しない、流布しないのも、
言葉の障壁がかなりの理由となっているのではないでしょうか?
(これによく似たことを、以前、別のコーナーで
確か kyotag さんが話しておられました。)
「愛」、たったこれだけの言葉でさえ、日本語ネイティブにとっては
難しい言葉なのです。
ましてや、政治・経済・法律・科学技術などの抽象的な議論の中で
出てくる西洋の概念を明治時代に即席に訳した言葉などは、
日本語ネイティブにとって、難しくないわけがありません。

今回は、これで終わります。
私は、しゃべりすぎてますね。

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Re:役職や地位を表す日本語と英語たろこ 5837/17-21:34
 記事番号582へのコメント


突然内容のレベルを落とすような書き込みで申し訳ありませんが、大変興味深く拝読させて頂きま
した。そして思ったのは、もう何年も前にアメリカ人とエクスチェンジ・カンバセーションという
ことをしていた学生時代の話です(その試み自体は、私は英語を話したがり、相手は日本語を話し
たがるために、あまり実りの多いものとは言えなかったのですが)。

あるとき、相手から、なぜ日本語は、1人、2人、3人、1本、2本、3本、1冊、2冊、3冊、などとい
う区別があるのか、無意味じゃないか、と言われました。それに対して、私は、英語だって a
glass of - だの、a cup of - だの、piece だの sliceだの、私からしたらあまり意味がある
とは思えないことが多い、と答えました。

その後、向こうは、そういえば英語には、a clove of galic という、これまでgalic以外の使用
を聞いたことのない数え方があるな、と言い出し、私は私で、そういえば、日本語ではウサギを1
羽、2羽、と数えるけれど(口語では1匹、2匹でよいのかもしれません。)、それは昔「ウサギは
鳥」として食べていたから、というようなことを聞い気がするな、と言い出し、結局、どっちの言
葉もやっぱり難しいね、ということに落ち着きました。

言語は、文化ですね。カタカナを使うことによって外国語を日本語に取り込んでしまう日本語
(人)の柔軟性には、時々日本人ながら感心します。以上、本当にお目汚しでした。。。

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Re:役職や地位を表す日本語と英語kyotag 5847/18-03:26
 記事番号582へのコメント

>>"I love you." この言葉はとてもポピュラーですが、
>この簡単そうに見える言葉でさえ、きちんとした日本語には
>なかなかならない。「愛してるわ」という訳文は、どうも当てはまらない。

Leeさん、I love you.は、本当に面白い例ですよね。職場で「カエルコール」をしているおじさ
んが電話を切る時に奥さんに向かって言うI love you.は、「じゃあね」くらいにしか聞こえない
こともあるし、同じカエルコールでも、これが娘に対してだと、「良い子で待っててね」みたいな
ニュアンスもありますよね。映画などで使われているI love you.は、もっと日本語の「愛してい
るわ」に近いこともありますし。

キリスト教のことも触れておられましたが、まったくおっしゃる通りですよね。小さい頃から、
Love thy neighbor.と教えられ、そのneighborは、家族、友人、知人、知らない人すべてを含む
わけです。Loveは日本語の愛に比べて、もっと身近な言葉であって、その出所はつまるところ神な
んですよね。

妹尾河童の「少年H」という本で、主人公の母親は敬虔なクリスチャンなのですが、間借りしてい
た学生に、キリスト教の愛について「愛やね、愛」と毎日のように語っていたら、その学生が気持
ち悪がって出ていってしまった、というくだりが思い出されました。

すみません、余談でした。


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Re:役職や地位を表す日本語と英語かふぇ 5857/18-04:12
 記事番号584へのコメント

kyotagさんは No.584「Re:役職や地位を表す日本語と英語」で書きました。
>>>"I love you." この言葉はとてもポピュラーですが、
>>この簡単そうに見える言葉でさえ、きちんとした日本語には
>>なかなかならない。「愛してるわ」という訳文は、どうも当てはまらない。
>
>Leeさん、I love you.は、本当に面白い例ですよね。職場で「カエルコール」をしているおじさ
>んが電話を切る時に奥さんに向かって言うI love you.は、「じゃあね」くらいにしか聞こえない
>こともあるし、同じカエルコールでも、これが娘に対してだと、「良い子で待っててね」みたいな
>ニュアンスもありますよね。映画などで使われているI love you.は、もっと日本語の「愛してい
>るわ」に近いこともありますし。
>
>キリスト教のことも触れておられましたが、まったくおっしゃる通りですよね。小さい頃から、
>Love thy neighbor.と教えられ、そのneighborは、家族、友人、知人、知らない人すべてを含む
>わけです。Loveは日本語の愛に比べて、もっと身近な言葉であって、その出所はつまるところ神な
>んですよね。


>
>妹尾河童の「少年H」という本で、主人公の母親は敬虔なクリスチャンなのですが、間借りしてい
>た学生に、キリスト教の愛について「愛やね、愛」と毎日のように語っていたら、その学生が気持
>ち悪がって出ていってしまった、というくだりが思い出されました。
>
>すみません、余談でした。
>

こんにちわ、Kyotagさん、Lee さん。

日本語の「愛」と、英語の「Love」についてですが、1946年に出版されたルス・べネデイクトの「菊と刀」に
よると、日本で使われていた「愛」は上位の者が下位の者に感じる好意 affection であるらしいです。
著者権の違反になるのかどうかよく知らないけれど、一応 quote してみます。

”Ai means "love" in Japan and it was this word ai which seemed to the missionaries of
the last century the only Japanese word it was possible to use in their translations of
the Christian concept of 'love'. They used it in translating the Bible to mean God's
love for man and man's love for God. But ai means specifically the love of a superior
for his dependents"

>一語の辞典シーリーズに、 柳父 章さんが 「愛」の言葉について書かれていますが、読みたいなと思っ
ています。でも、上の 「菊と刀」の Ruth Benedict の解釈はどう思われますか?(その頃のベストセラー
で大きな反響を呼びましたよね。)



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Re:役職や地位を表す日本語と英語sabine 5877/18-08:57
 記事番号585へのコメント


>>キリスト教のことも触れておられましたが、まったくおっしゃる通りですよね。小さい頃から、
>>Love thy neighbor.と教えられ、そのneighborは、家族、友人、知人、知らない人すべてを含む
>>わけです。Loveは日本語の愛に比べて、もっと身近な言葉であって、その出所はつまるところ神な
>>んですよね。

>日本語の「愛」と、英語の「Love」についてですが、1946年に出版されたルス・べネデイクトの「菊と刀」に
>よると、日本で使われていた「愛」は上位の者が下位の者に感じる好意 affection であるらしいです。
>著者権の違反になるのかどうかよく知らないけれど、一応 quote してみます。



こんにちは。kyotagさん、かふぇさん。

日本語の中には「慈愛」とか「いつくしむ」という言葉がありますが、これらの言葉の中には目線で見る「愛」
が感じられて仕方がありません。言葉に対する感じ方には人それぞれ微妙な違いがあると思うので自信はないのですが。
出所はつまるところ「仏」でしょうか? これらの言葉は仏教思想を背景として使われてきたと思うのですが、
詳しいところはわかりません。

ところで蛇足ですが、どこかで耳にして忘れられない童謡の1節がありました。
「・・・アイアイ、アイアイ、おさーるさーんだよー・・・」
この「アイアイ」というところは「愛愛」って言ってるんだとずっと思いこんでいました。
大人になっても「愛」にはだまされっぱなしです。



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Re:役職や地位を表す日本語と英語kyotag 5887/18-13:50
 記事番号585へのコメント

>
>”Ai means "love" in Japan and it was this word ai which seemed to the missionaries of
>the last century the only Japanese word it was possible to use in their translations of
>the Christian concept of 'love'. They used it in translating the Bible to mean God's
>love for man and man's love for God. But ai means specifically the love of a superior
>for his dependents"
>
上の 「菊と刀」の Ruth Benedict の解釈はどう思われますか?(その頃のベストセラー
>で大きな反響を呼びましたよね。)
>

かふぇさん、
なるほど、キリスト教の「愛」は、宣教師が選んだ言葉だったわけですね。私も「菊と刀」はずいぶん前に読みましたが、そ
の当時はクリスチャンでなかったので、この部分はあまり印象に残っていませんでした。有り難うございます。

・・・But ai means specifically the love of a superior for his dependents"

日本でキリスト教の「愛」が紹介された時、最初は現実の封建制をベースにキリスト教を理解しようとする信者が多かったの
ではないかと思います。少なくともスペイン・ポルトガルの宣教師はカソリックですから、ローマ教皇を頂点としたカソリッ
クのピラミッドは、当時の幕府・将軍の制度と似た面があり、上から「愛」などが下ってくることはあっても、下から上にと
いうのは、年貢を納めるか一揆を起こすしかなかった、そして、そのピラミッドは、家庭の中にも成立していた背景を思い出
させます。

「菊と刀」が書かれた当時の日本社会ではすくなくとも外面的には、いまだ上のような状況が残っていたのかもしれませんよ
ね。引用にもありますが、キリスト教での愛は一方通行ではありません。日本の社会が封建制から脱して、男女同権になって
くるにしたがって、「愛」の意味も変わってきているということでしょうか?

そういえば、カレル・ヴァン・ウォルフレンの本では、日本の政府や企業のトップの一般国民に対する「一方通行」のおそろ
しさ、不可解さを細かく書いてありますよね。彼の「人間を幸福にしない日本というシステム」は、私には衝撃的ですらあり
ました。この辺も、封建制度に慣れた日本人と、キリスト教徒の発想の違いかな、と興味があるのですが。

翻訳って、このような底知れない面白さを持つ「言葉」や「文化」と四つに組む作業なんですね。皆さん、いろんなことを考
えさせてくださって有り難うございます。

kyotag

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Love: お大切ソーデン 5867/18-07:26
 記事番号582へのコメント

皆さん、こんにちは。


|"I love you."は、このようにしてきわめて広範囲の状況で
|使われるため、「君はほんとにいい奴だ」「あなたってほんとに
|いい人ね」くらいの意味合いしかないのではないでしょうか?


以前、セサミストリートの中で "What is love?" と聞かれた女の子が、"It's a hug."と答え
てました。可愛らしかったのでよく憶えています。

山本七平氏によると、昔のキリスト者は次のように訳したそうです(出典は忘れました)。

Love: お大切

たいした情報もなく、相手の言葉もわからなかった頃だったと記憶しています。



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Re:Love: お大切kyotag 5897/18-14:01
 記事番号586へのコメント

ソーデンさん、はじめまして。
>山本七平氏によると、昔のキリスト者は次のように訳したそうです(出典は忘れました)。
>
>Love: お大切

私は単なる1クリスチャンで教義や教史の知識はあまりないのですが、これはとっても良い言葉ですね。上下関係もあまり感じ
させませんし。

ただ、キリスト教のLoveには、信条や愛するもの(神であれ、人であれ)のためには喜んで身を投げ出すという激しいニュア
ンスもあり(たとえば、Jesusが十字架に掛かったことなど)、「お大切」という言葉に当時そのような意味もあったのだろう
か、と興味を持ちました。是非、氏の本を探して読んでみたいと思います。

kyotag

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Re:Love: お大切ソーデン 5907/19-11:41
 記事番号589へのコメント

kyotag さん、こんにちは。

山本七平氏は、旧約の世界に並々ならぬ関心を持たれていたようです。晩年は、よくシナイ半島の
砂漠や荒野に出かけられていたそうです。次のような功績があります。


●氏の登場以前はほとんど馴染みのなかった旧約聖書の世界を、一般の日本人に紹介した。

●日本人論の範疇に持ち込むことによって、旧約思想という「未知」を一般人の「既知」に上手く
関連付けた。

●想像を絶する世界観が存在すること、そしてその世界観は特殊ではなくキリスト教、イスラム、
ユダヤ教として世界中で脈々と受け継がれ、現在でも人々の精神構造の根本となっていることを説
明した。

●旧約思想と現在の経済/政治体制とを関連付けた。



翻訳と山本七平を強引に関連付けるならば、法律/ビジネス分野をあげることができます。

例えば、契約書の行間には「契約」という思想が存在しており、その根本は旧約聖書にあることを
説明しています。

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Re:Love: お大切kyotag 5937/19-15:57
 記事番号590へのコメント

ソーデンさん、こんにちは。
ご親切に山本七平氏のお仕事についてこれほどまでに細かく、わかりやすく紹介してくださり、有り難うご
ざいます。私も旧約の世界は大好きですので(まるで古事記や日本書紀のような面白さがありますよね)、
日本からの輸送費がいくらかかろうと、もう絶対に氏の著作を読みたくてたまらなくなりました。インター
ネットでも、もっといろいろ調べてみようと思います。

翻訳の登録通知だけは頂くのですが実際のお仕事がこないので、あまり安心して輸送費に投資していられな
いのが辛いところですが、氏の著作を読みながら気長に待とうかと思います。

ほんとうに有り難うございました。

kyotag