コメットさん
特許事務所もいろいろですから、翻訳できる人が非常に少ないとか、
ほとんどが翻訳会社に依頼しているとか、弁理士が直接翻訳したら
使えないレベルのものが多いとかは、当然のことながら、そういう
場合もあり、そうでない場合もあると、お考え下さい。
例えば私が勤めていた特許事務所では8~9割方は所内で翻訳してい
ました。所内でこなしきれなくなってやむなく外注に出すと帰って
きた訳文が使い物にならないという担当者の愚痴も、時々聞かされま
した。いろいろな翻訳会社を試してみたのですが、なかなかよい翻
訳会社には当たらず、これはよいと思っても人気の翻訳者にはたい
てい先約があって、滅多なことでは依頼を受けてもらえないという
状況が多かったようです。
私が勤めていた事務所でも、弁理士先生は法律家としての仕事が忙
しいので自ら翻訳する人は多くはありませんでした。しかし、それ
でも資格をとりたてで実務経験の少ない若い弁理士先生の場合は、
まずは5年~10年かけて、年単位の長期海外出張(主に米国の法律
事務所または得意先企業の特許部門への出張)も交えながら、英語
力・翻訳力を身につけることになっていました。
それから、私が所属していた事務所では、翻訳専門の部門もありま
した。そこでは、最初は必ずしも技術的バックグラウンドを持って
いなかった方々が、必要に応じて所内の弁理士や特許技術者とディ
スカッションしながら、元々持っている英語の素養を生かして、さ
まざまな特許関連翻訳をなさっていました。その事務所は、商標か
ら機械、電子、化学、薬学、バイオと幅広い人材が集まっている総
勢200人を超える規模の事務所で、企業や大学で第一線の研究を何年
も経験してから入所した技術者も少なくなかったので、翻訳専門部
隊の方々も、技術的内容を相談する相手にはあまり不自由しなかっ
ただろうと思います。ただし、その事務所の場合、翻訳専門部隊の
方々は我々特許技術者とディスカッションすることが多く、彼らが
発明者と直接話をする機会というのは、ほとんど無かっただろうと
思います。しかし、それもおそらくは事務所次第、所長の考え方次
第であって、一概にどうとはいいかねるでしょう。
というわけで、翻訳者として特許事務所に勤めてどのくらい将来の
ためになるかは、事務所の態勢や考え方次第という面がかなりあり
そうな気がします。決定的な意見を述べられなくて、申し訳ないで
す。迷わせるのが本意ではありませんが、いろいろな体験談を幅広
くお聞きになるのも悪くはないだろうと思って、書き込みました。
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