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タイトル: 「付き物」の名詞なら the をつける(その1)
投稿者 :南都隆幸  <email> <Web>
投稿時刻 : 2008年7月7日10時25分 
本文:
t.t. さんが 7月6日に No. 10754 のコメントとして、次のような文章
を引用されました。

<引用はじめ>
ロングマンのCD辞書 backhand
--- a way of hitting ___the ball___ in tennis and some other
games in which the back of your hand is turned in the
direction of the ball when you hit it
<引用おわり>

このコメントが下の方に追いやられてしまってわかりづらいので、僭
越ながら新しいスレッドを立てさせて頂きます。

上に引用された定義文では、 "the ball" は「ボールを打った瞬間に
はそのボールは特定されている」というわけではないと僕は思いま
す。ここでの the は、「ボール」という存在を抽象化する働きをして
いるはずです。僕が読んだ数冊の冠詞についての本でもそのように扱
っていたように思うのですが、定かではありません。あとでもしその
ような解説文を見つけたら、ご紹介します。

「ボールの存在を抽象化するための the」だなんて、こじつけか禅問
答みたいに聞こえるかもしれませんが、そんなつもりはありません。
ここで「ボールを打つ」と言っているとき、具体的な一つのボールと
いうよりも、テニスではボールが出てくるのが当たり前になっている
ので、具体的な一つのボールという意味での "a ball" ではなく、テ
ニスではいつも出て来る、半ば抽象的な存在となってしまった "the
ball" というわけです。

このように「テニスにおけるボール」を抽象的なもの (the ball) と
して捉えるか具体的なもの (a ball) として捉えるかは、筆者によっ
て変わってくるみたいだ、というふうに今の僕は感じています。

テニスではなくてゴルフの場合にもボールはつきものですが、今度
は、最初にボールが出てくるときに "your ball" と書いていて、二回
目にそのボールが出てくるときに "the ball" としているケースをお
見せします。

The Bunker Shot (この記事のタイトル)
(前略)
The key trick is to stay calm. Don’t panic when faced with a
bunker shot. If you find ___your ball___ plugged or against
the face in a fairway bunker apply some sense to the shot. We
all love to hit incredible bunker shots but that is not always
possible. Sometimes you just need to get out of the trap.

If you are facing a short bunker shot the key rule is to
always hit the sand before ___the ball___. Hitting the sand
between one and two inches before ___the ball___ will ensure
the best results. But don’t bother about this rule for longer
fairway bunker shots. Taking sand before the ball will just
reduce your power.

More than any other shot you will play the bunker shot
requires you to concentrate on the way you address ___the
ball___. Because the bunker shot will rely more on your wrists
than the rest of your body you must address ___the ball___ in
a way that will allow your body to stay as still as possible.
http://golfswingreviews.com/the-bunker-shot.html

上の例に最初に出て来る "your ball" を、もしも "a ball" としたら
どうなるか?"a ball" とは「どこにある、どのボールでもいいから、
ともかく一個のボール」という意味になります。つまり "any ball
that you happen to find" という意味合いが "a ball" という言葉に
含まれていると思います。もしこのような "a ball" を "your ball"
の代わりに入れてしまうと、「自分の打つべきボール(自分の打った
ボール)じゃなくてもよくて、他人の打ったボールでもかまわない」
ということになってしまいます。

ここではあくまで「自分のボール」でないと話の辻褄が合いません。
だからこそ、"a ball" ではなく、"your ball" としているのだと思い
ます。さらには、筆者はここで "the ball" とはせずに "your ball"
とすることによって、抽象的な "the ball" ではなくて、読者自身の
ボールという言い方をすることによって、よりパーソナルな語感を持
たせているのではないかという気がします。(違ってたりして。)
(その2に続く)


親記事コメント
なし 「付き物」の名詞なら the (その2)-投稿者:南都隆幸

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