ラジカルな翻訳業界用語事典
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- ローカライズ難民
国内ローカライズ産業の急速な衰退にともない、その将来性に見切りをつけた人(余剰人員ともいう)の一部が、古き良き時代の翻訳業の雰囲気が残る(レートなどの条件がよい)特許翻訳や医薬翻訳など他の分野に転向しているという。
その行く末はまだ予測できないが、特許翻訳ではすでに人材のだぶつきを懸念する声もあるらしい。ハードルが高いという漠然としたイメージで新規参入が抑えられ、秩序(翻訳業者側に都合がよいという意味で)が保たれてきた医薬翻訳も、臨床分野を中心に今後競争の激化が予想されている。この傾向は個人に限らない。かつてローカライズを業務の中核に据えていた翻訳会社の多くが厳しい経営環境から、廃業や倒産に追い込まれるか、人材派遣業務への傾注や、特許・医薬など他分野への転業で危機をのりこえようとしている。
【以下2007年以前】
- 在宅よりもインハウスがいい?
一般に、プロ翻訳者は会社員よりは独立してフリーランスを、オンサイトよりも在宅勤務を志向するものである。ところが、最近、フリーランスの立場のまま、特定の翻訳会社に出勤して社内で仕事をする就業形態が増えている。もちろん、翻訳工程を管理する側にとってインハウス翻訳者の採用は利点が多いのは明らか。だが、フリーランスの翻訳者という立場でインハウスを好む人が多いというのはかなり意外である。その理由としてあげられるのは、組織に所属しているような安心感がある、仲間との共同作業でモチベーションがあがる、不明な点をその場で質問できたり、ベテラン翻訳者の仕事ぶりを直接見られたりしてスキルアップになる、などがあるという。
- 公然の秘密
短期的に翻訳で高収入を得られる可能性があることはよく知られているが、実のところ、いわゆる「業界の有名人」の中には、お世辞にも裕福とはいえない人もいるという。
その理由はいくつかあるが、ひとつには10年単位での長期になると、翻訳請負だけに集中して稼ぎ続けるのが精神的にも肉体的にも困難という事情がある。市場の変化に対応できず、いつのまにか淘汰されてしまったり、お金にならないお遊び(脇道or逃避)が過ぎるようになることもある。
- 35億の申告漏れ
『ハリー・ポッター』シリーズの邦訳を手掛けた翻訳者の松岡祐子氏が国税局の税務調査を受け、3年間で約35億円の申告漏れを指摘されたという。申告漏れだけで35億円ということは、実際の収入はそれ以上あったということになる。おそらく、日本の翻訳史上、最も稼いだ翻訳者だろう。人気テレビ番組「徹子の部屋」に出演したときは、「そんなに儲かっていません」と疑惑を否定していたのだが…。一方で、大勢の出版翻訳家が食べていけない現実がある。出版翻訳界の格差は凄まじい。
- キャッシュフロー改善型スクール
アルバイトで翻訳スクールを併設する翻訳会社が増えている。翻訳業務を請け負っている会社が主催する翻訳講座なら、未経験者に実務の機会を提供し、新しい優秀な人材を育てていく役割が期待できる、と普通は考えるのだが、実態は、おそまつな運営のところもあるので、慎重に選択して欲しい。翻訳会社として少々の実績を誇っていても、翻訳教授法や学校運営に関して素人であれば、きちんとした教育などできるはずがない。実際、肝心の教育部分は外注で丸投げという無責任な運営体制が珍しくないのだ。そもそも、スクール開設の動機が、売掛金の回収に時間のかかる本業で悪化したキャッシュフローを、授業料前金制の翻訳講座によって改善しようという姑息な思惑によるものでしかなかったりする。
- 信用詐欺
誰でも、初めての取引先には警戒心を持つものだ。普通、まず小口で引き受けて、信用状況を確認する。ところが、それを逆手にとる詐欺の手口もある。最初に、小口で依頼がある。それを納品すると、その分の代金は即座に払ってもらえるので感激する。この段階で、翻訳者は優良の取引先だと思い込んでしまう。間髪いれずに、2回目の依頼が大口であり、その支払いがすまないうちに、3回目の依頼が来る。この段階でも、まだ良質の客だからと信用しているのと、催促するのはいかがなものかという遠慮があるために、危険な状況になかなか気が付かない。売掛金が未回収のまま、次の仕事を受けてしまうことを繰り返す。かなりの額が未払いになって、ようやく事態の深刻さに気が付くが、優良だったはずの取引先は、のらりくらりと言い逃れをするばかりで、いっこうに払う様子がない……。
- 職安法の足かせ
……有料で職業紹介を行う者(有料職業紹介所)は、厚生労働大臣の認可が必要である。有料職業紹介所は、求職者である個人から紹介料その他の名目で金銭を得てはならない。……翻訳関連もネットビジネスブーム。リソースマネージメントサイトやマーケットプレースが多数立ち上がるようになった。だが、職安法という足かせがあるため、ビジネスモデルとしての実現可能性は不透明。つまり、ニーズはあってもそれ自体ではビジネスとして成立する可能性は低いということ。
もし、個人からお金を取って仕事を紹介している悪徳業者を見つけたら、違法行為なので、公正取引委員会に告発しよう!
- ウラシマ症候群
大型で好条件の案件に長期間かかりっきりになっていた翻訳者が、ようやくその案件を終えると、その後、仕事の依頼がばったりとぎれてしまう現象。1社の仕事を優先して、他社からの依頼を断り続けると、やがて愛想を尽かされて取引をうち切られてしまう可能性が高い。それゆえ、フリーランサーは無理をしても同時に複数の案件をかかえることになる。
「竜宮城から帰ってきた浦島太郎のことを知る者は誰もいなかった」
- 実は副業なんです
翻訳業から出発して、現在の本業がコスメ事業という会社はよく知られているが、ある大手翻訳学校もグループ企業の中核はリサイクル事業会社。翻訳学校は副業らしい。翻訳には副業や兼業で携わっている方がハッピーなのかもしれない。
- キャッシュフロー
一般に翻訳請負会社では、受注してから売掛金を回収するまでに、納品後2〜3ヶ月程度かかる。しかも、たいていは、外注翻訳者への支払期日が先に来るので、資金ショートがおきやすい。
一方で、翻訳教育産業では、受講料の全額前払いが主流で、社員の給料や講師の報酬は月々の後払いで済むため、資金繰りにはゆとりがある。通信教育などでは、中途での挫折率が高くなるほど、経費を圧縮できるというメリット(?)もある。ただし、翻訳教育ビジネスでは、かなりの額を広告宣伝費に投入しなければならないので、経費率は決して低くない。
- 公称発行部数
ある有名な翻訳雑誌(現在は誌名変更)の全盛期、公称発行部数は20万部あることになっていた。この数字を基に広告営業をするわけだが、実部数とは大きな隔たりがある。元編集者の話によると、実際は2万部がやっとだったという。別の雑誌の公称発行部数は9万部ということになっているが、一説によるとせいぜい1万部くらいだという。発行部数の誇張は、翻訳雑誌に限ったことではなく、日本の出版界全体がそういった体質なのだそうだ。
- 持ち株制度
フリーの翻訳者に自社の株式取得を働きかける翻訳会社が増えているという。下請けのフリーランサーには、良好な取引関係を維持したいという意識があるため、この種の申し出を断りにくい。安定した取引関係を期待して、ついつい小口で株を買ってしまう翻訳者が少なくないようだ。だが、実態は投資なのではなく、経営状況が思わしくない会社の運転資金に融通されているだけということもあるので注意が必要。会社の内情に疎い、外部の翻訳者はカモになりやすい。当然、出資分を丸損という可能性が高い。下請けの個人事業者にまで金をせびるような経営センスの会社では先が見えている。
- 翻訳業界幻想論
そもそも翻訳業界などという業界は存在しないという説がある。たとえば、IT翻訳はIT業界の一部で、特許翻訳は特許業界の一部だと考えた方が自然だ。翻訳業界の実在を示す根拠として業界団体などが存在するが、それは翻訳業界という括り方が都合の良い人達による創作という見方もできる。
- 現物支給
本(または翻訳書)を出版する際、著者(または訳者)に対して原稿料や印税を払わず、初版の一部を現物で支給する報酬形態。販売見込み部数の少ない本では珍しくないという。事実上の無報酬だが、自分の名前が入った本を出せるのなら無報酬でもかまわないという人はいくらでもいる。
- 超人
翻訳速度がベラボーに速い翻訳者。わずか2時間で平均的な翻訳者の1日分の仕事をこなしてしまう超人が確かに実在する。特殊なノウハウがあって生産性をあげているというわけではなく、そもそも持って生まれた能力が非常に高い人が希(まれ)にいるのである。
- 大学翻訳センター
古くから業界にいる人には有名な話らしいのだが、化粧品のCMで有名なDHCはもともと翻訳会社として出発した。現在の社名はDaigaku
Honyaku Center
の頭文字をとったものだという。初期のスタッフには、その後独立して大物となった人もいるという。
- 年間2億円
最大手の翻訳学校が最盛期に広告宣伝費に投じていた金額。
【以下2001年以前】
- 専業主夫
配偶者の扶養家族になっている無職の男性。子育てへの参加など、もっともらしい理由を述べるのだが、その実態はリストラによる失職や勤労意欲の欠如などの理由により家庭に逃げ込んでいる男性が大半だという。最近流行しているようで、以前ほど珍しくはないが、男性が一日中に家にいると近所の人に不審に思われたりして、まだまだ世間の目は冷たい。
社会の表に登場するようになってから日が浅く実績に乏しいため、妻の側が自分に経済的に寄りかかってくる夫に対し、生涯愛情を持って養い続けられるかという本質的な問題が残る。老後になってから、妻に捨てられた夫が路頭に迷うことになるかもしれない。
- マーフィーの法則(不景気と翻訳志望者数 )
どういう原理なのかはわからないが、不景気になると翻訳学習者が増えて翻訳学校は盛況になる。90年代後半には毎年、受講者総数の記録更新を続け、学校側は笑いが止まらない状態だったという。当然、そこに目を付けて新規で参入する業者もいるわけで、この不景気下で翻訳学校は倍増している。だが、さすがに数が増えすぎたようで、最近はどこも経営状況が思わしくないらしい。
- マーフィーの法則 ( 技術翻訳者 )
技術的な勘所を押さえた翻訳のできる優秀な翻訳者が不足しているという。一流の技術者であれば、翻訳者としても一流になれる可能性が高いだろうが、そんな優秀な人はわざわざ翻訳者などにはなりはしない。もっと待遇のいい仕事がいくらでも見つかるのだから。
- 夢のゴールドラッシュ
バブル崩壊後の不況下、コンピュータ分野は「産業翻訳の金鉱脈」と呼ばれ、翻訳需要の牽引役だった。IT翻訳者には月収が100万円を超える高額所得者も珍しくなかった。だが、新規参入が比較的容易であるため、翻訳志望者の人気が高く、SEやプログラマーから転身をはかる人が多いこともあって、翻訳者の数が激増。今や過当競争気味である。その上、翻訳メモリ(翻訳者の収入を減らすソフト)の普及でレートの下落が著しく、現状はかなり厳しい。最近は、むしろ特許やメディカルの分野に安定した収入を確保している翻訳者が多いようだ。
【以下2000年以前】
- ASP
いわゆるアプリケーション・サービス・プロバイダのことだが、翻訳請負業界、翻訳学校業界ともにASP化が急速に進んでいる。もはや、翻訳の学習はもちろんのこと、求職・求人や仕事の発注・受注もネットなしでは考えられない。
- 階層構造(特にローカリ業界)
翻訳の仕事が本来の発注者から実際に翻訳作業をする翻訳者に直接わたることは少ない。大きなプロジェクトになるほど、元請けから下請け、孫請けへと枝分かれして下がっていき、複雑な階層構造を形成する。この点で、翻訳業界は土建業界に似ている。低コスト、短納期などの無理難題が順に下請けに押しつけられていく。仕事がなくなると下の方から干上がっていく。
- 35億円市場
翻訳請負業務そのものとは別に、翻訳に関心がある人をターゲットにしてビジネスを展開する翻訳学校市場が存在する。翻訳志望者の数はプロ翻訳者の数倍はいると考えられ、その市場規模は年間35億円とも50億円とも言われている。だが、新規参入する企業が相次いでいる上に、個人でオンライン講座を運営する人まで現れて、競争が激化している。
- 夢を売るビジネス
翻訳志望者の大半は一見華やかな出版翻訳に目がいくため、翻訳学校では出版系の翻訳講座の人気が高い。ところが、出版翻訳の世界では、膨大な数の志望者に対して、実際に仕事をしている人はごく少数という矛盾がある。ほとんどの人は受講後も結局仕事にありつけないのだが、後悔したり不平不満を言ったりしてはいけない。少なくとも受講中は「自分の訳書を出版できるかもしれない」という夢を見せてもらっているのだから。
- CCJK
中国語(繁体字)、中国語(簡体字)、日本語、韓国語の総称。ローカリゼーション・ビジネスではヨーロッパが最大のマーケットで、アジアが続く。アジアの4大言語を総称してCCJKという。
- 守秘義務
翻訳者には翻訳業務を通して知り得たクライアントの機密情報を外部に漏さないよう努める義務がある。仕事を請け負うにあたって書面で守秘義務契約を結ぶこともめずらしくない。
都内在住の翻訳者がクライアントの最新製品情報をライバル企業に売却しようとして産業スパイ容疑で逮捕された事件が、新聞の三面記事になったことがある。
- 機密保持契約
一般にNDA (Non-Disclosure Agreement)と略されることが多い。 守秘義務の項を参照。
- MLV、SLV
Multiple Language Vendor、Single Language Vendor の略。日本国内ならSLVは英語(またはその他の1言語)と日本語間の翻訳を専門に扱う業者であるケースがほとんど。
- IT翻訳
Information Technology(情報技術)翻訳の略称。コンピュータ関連の技術翻訳、ソフトウェア
ローカリゼーションにともなう翻訳などを指す。
- L10N
ローカリゼーションの省略語。「ライオン」と読む。
"Localization"の L と N の間が
10
文字であることから、このように略して表記される。大手
MLV、ライオン・ブリッジ・テクノロジー社の社名の由来。
- ローカリゼーション
狭義では欧米製コンピュータソフトウェアの日本語化作業のこと。特にマニュアル、オンラインヘルプなど関連ドキュメントの日本語化(単なる翻訳作業ではない)で大きな需要がある。当初は「ローカライズ」、「ローカライゼーション」とも言われていたが、どうやら「ローカリゼーション」という表記に落ち着きそうだ。
【以下1998年以前】
- ローテク翻訳者
パソコンを単なるワープロとしてしか使用していなかったり、電子ブックを専用のリーダーを使って閲覧していたりするようなセンスのない人のこと。csvファイルで支給された用語集をEXCELで検索するようではね...。
- うんのさんの辞書
最新ビジネス・技術実用英語辞典英和・和英のこと。現役の翻訳者である海野ご夫妻が独自に編纂したもので、一般の英和・和英辞典にはない産業翻訳特有の用例が豊富。定番中の定番である。
- ドタキャン
土壇場キャンセルの略。「近日中に仕事を発注するからよろしく」という連絡があったのでスケジュールを空けておいたのに、発注予定当日または間近になって先方の勝手な都合で一方的にキャンセルされること。ルール違反だが「ごめん」の一言で片づけられてしまうことが多い。
- トライアル
翻訳の腕前をチェックするテスト。翻訳会社などが翻訳者の採用を決める際に行う。一定のレベルに達するとその会社に登録できる。ただし、登録したからといってすぐに仕事の依頼があるとは限らない。
- 業界の縄張り意識
一般に通訳と翻訳は同じような仕事だと思われがちだが、まったく別の業界である。翻訳業界の中でも、ビジネス翻訳、出版翻訳、映像翻訳はそれぞれ違う業界だという考え方がある。通訳者>産業系翻訳者>ノンフィクション出版>フィクション>SF>映像の順で縄張り意識が狭くなる。SF系の翻訳家には偏狭な人が多いらしい。
- ゼネラリスト
多数のジャンルの翻訳をこなせる人のこと。語学力や日本語の文章力で勝負している翻訳者で、知識は広く浅くが信条のようだ。ゼネラリストと言えば聞こえはいいが、実態は得意分野を名乗るほどの専門知識がないために仕方なくよろず屋をやっている駆け出し翻訳者であることが多い。
常識的に考えて、一人の翻訳者が多数の分野で専門家と同等の知識を習得するのは不可能。なんとかなるのは、せいぜい2〜3分野だろう。
- 翻訳技能審査
社団法人日本翻訳協会が実施する翻訳能力の検定試験。3級以上は労働省の認定である。通称「翻訳検定」。協会が非公式に2級以上の合格者を翻訳会社へ紹介しているという噂がある。
- 工業英検
日本工業英語協会が実施する技術系英語の検定試験。2級以上は文部省認定。テクニカルライティングの能力を見る。
- 目標言語(Target Language)
訳出した側の言語。英文から日本文へ翻訳するときは、英語がSource
Languageで日本語がTarget Languageになる。一般に、目標言語を母国語とする翻訳者が最も高品質の翻訳を行えると考えられている。
- 先生
翻訳者もクライアントの指名が付くようになると、翻訳コーディネート会社に大事にされる。「先生」などと呼ばれて慇懃に扱われることさえある。類義語に「売れっ子ホステス」がある。
- 先生(その2)
プライドの高い翻訳者を悪条件で使うときの殺し文句。
フリーランス翻訳者でも、特に男性翻訳者には自尊心の強い人が多い。取引先から「先生、先生」などとおだてられると、つい、いい気になってしまう。気が付くと、低報酬や短納期などの悪い条件をのまされていることもある。
- エース
翻訳コーディネート会社で発注先として真っ先に名前のあがる翻訳者。他にも、抑えのエース、中継ぎ、クリーンアップ、2軍選手など翻訳者にはいろいろなランクがある。 大魔王
- レート
翻訳単価のこと。翻訳会社が在宅翻訳者に発注するときは、比較的平易なマニュアルや仕様書などの英文和訳では訳文ベースで1500円〜2000円/400字が標準だと言われている。クライアントへの提示価格はこの倍くらい。案件の難易度により作業効率が大きく変動するため、かならずしも翻訳単価=時間単価ではない。
- ホームレス・トランスレータ
インターネットが普及し、個人翻訳者が営業用のWebページを作成して公開するのが当たり前になった。未だに自分のホームページを持っていない時代遅れの翻訳者のこと。
大魔王
- 超訳
アカデミー出版がシドニージェルダンの一連の作品を翻訳する際に採用した翻訳手法。同社はかなりの成功をおさめた。文章が読みやすくなる反面、不正確な訳が多くなるため欠陥翻訳だと業界各方面からたたかれた。「思い切った意訳」という意味で使われることもある。
- 超誤訳
文章としては完成していて文脈にも上手くとけ込んでいるため、訳文を読むだけでは判別できないたちの悪い誤訳。まったくの嘘ということが多い。
- 翻訳家
訳書や作品が100点を超えるような翻訳の大家に対する尊称。普通は「翻訳者」と名乗る。「翻訳家」を自称する人もいるが、たいていはモグリか単なる無神経。
大魔王
- テーチングプロ
翻訳講座の講師で、教えることが本業の人。ほとんど実務経験のない先生稼業のベテランも珍しくない。ただし、現役の翻訳者がかならずしも優秀な講師であるとは限らないし、テーチングプロでも受講生をたくさん集められる腕の良い講師はいる。このあたりは、プロ野球でいうところの「名選手かならずしも名監督ならず」に相通ずるところがある。
- 欠陥翻訳時評
泣く子も黙る、「翻訳の世界」誌の看板連載だった。
ここでたたかれるようになれば、一人前だとか言われたが、「翻訳の世界」が無くなってしまったため、それも伝説となった。
- TM (Translation Memory)
TMというと、かつてはIBMのTranslationManager(TM/2)を意味したが、現在では翻訳メモリ方式の翻訳支援ソフトのことをいう。TRADOS、TRANSITなどが有名。
- ミニマルトランスレーション
コンピュータマニュアル翻訳を初めて体系的に解説した古典的名著。98年5月にバベルプレスから復刻版が発売された。
- 実務翻訳
産業翻訳という言葉ができるまではこの言葉が一般的だった。最近ではビジネス翻訳とも言うがこれはバベルの造語らしい。
- 翻訳会社
翻訳エージェント、翻訳エージェンシー、翻訳コーディネート会社ともいう。実際の翻訳業務は社外の翻訳者に外注する業務形態が主流。母体が印刷会社やソフトウェア開発会社であるケースも珍しくなく、DTPやソフトウェア本体のローカライズまで手がけるところもある。
- 翻訳エージェント
翻訳取次会社のこと。翻訳会社を翻訳者の立場から眺めると、営業業務、スケジュール管理、金融機能を翻訳者のために代行してくれているように見えるので、エージェントという見方もできる。
- 翻訳ブローカー
翻訳を仲介するだけの個人または会社。仕事は翻訳者に丸投げで依頼し、独自に品質管理・チェック等は行わない。品質評価・管理能力の無い翻訳会社に対する蔑称で使われることもある。
大魔王
- 悪徳翻訳会社
翻訳代金を値切る、踏み倒す、などの悪行非道で、情報に疎い駆け出し翻訳者を泣かせる業者。中堅以上の翻訳者の間ではよく知られている常習犯もいるので、横のつながりを持って情報収集に励もう。
大魔王
- ソースクライアント
翻訳を依頼して下さる末端のお客様。通常は翻訳者との間に翻訳コーディネート会社が仲立ちする。
- プレエディット・ポストエディット
機械翻訳にかける前段階の編集作業、かけた後の仕上げ作業のこと。機械翻訳システムの導入に各社が失敗したため死語になりつつある。
- バベル
バベル翻訳・外語学院、バベルトランスメディアセンター、バベルプレスなどを擁する業界きっての大企業。特に出版翻訳のジャンルで強い。湯浅社長は日本翻訳協会の会長でもある。
- BUC(バベルユニバーシティ)
バベル翻訳・外語学院が主催する会員組織。講座の修了生がGraduate、Top
Graduateの別でランク付けされる。To Graduate会員にはバベルトランスメディアセンターから仕事が発注されるシステム。
- インハウス・トランスレータ
一般企業や翻訳会社の社内で翻訳作業をする社員翻訳者。たいていは固定給制。
- 年中無休24時間営業
フリーランス翻訳者の実状。一般に翻訳で生計を立てていくためには、休日返上の長時間労働を強いられる。年間で10日も休まなかったという話はざら。
- バブリーな翻訳者
産業翻訳でもコンピュータ関連分野は大幅に需要が伸びているため、翻訳者が不足しがち。一種のバブル状態だという人もいる。このような時流に乗って、確たるバックラウンドもないのににわかにコンピュータ専門を自称するようになった連中をバブリーな翻訳者と呼ぶ。(ただし、現状はこちら)
- ネット依存症
翻訳は在宅でできる反面、孤独な作業であり、人恋しくなることがよくある。そんな翻訳者にとって、ネット・コミュニティは、気軽に楽しめるコミュニケーションの手段であるが、これにはまってしまう人もいる。ひどくなると、翻訳の情報収集や人脈づくりという口実で本業をおろそかにしてまでコミュニティに入り浸るようになる。タバコに手を伸ばすような感覚でついついアクセスしてしまうようだ。さらに症状が進むと、コミュニティが生活の中心だと豪語してはばからないネット廃人に至る。
- 急性と慢性
ネット依存症には急性型と慢性型がある。ある日突然どこかのコミュニティに現れたかと思うと、怒濤のごとく投稿を繰り返すのが急性型ネット依存症。しかも、投稿文は長文で長時間かけて練り上げたものが多い。異常な執着心の原因は何らかの心理的な欲求らしい。一定期間が過ぎると全く投稿しなくなるのも急性型の特徴である。慢性型については上の項を参照。
編集者のことば
「ラジカルな」というよりも「シニカルな」とした方が適切かもしれません。冷めた視点で翻訳業界に対する知識を深めてください。不快な気分になっても責任は持てませんので悪しからず。
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